生理前のイライラ(PMS)

PMS(月経前症候群)に漢方は効果があるの?種類や市販薬などについても解説

PMS(月経前症候群)は慢性化することが多く、鎮痛剤などでその周期はしのいでもまた来月も来ると思うと憂うつになる…という方は多いのではないでしょうか。

PMSを根本的に解決したいなら、体全体のバランスを整えることで症状を改善する漢方が効果的です。漢方薬にはさまざまな種類の生薬が配合されていて、それらがPMSの原因に働きかけることで症状を抑えていきます。

今回はPMSに対する漢方の効果と、その種類や市販薬について解説していきます。PMSを漢方で根本的に治したいという方は、ぜひ参考になさってください。

PMS(月経前症候群)とは

PMS(月経前症候群)とは、生理前に起こる心身の不快症状のことです。PMSに悩む女性は非常に多いとされていて、その割合は女性全体のうちの約8割にものぼると言われています。

PMSの症状は多岐にわたり、人によって異なるのが特徴です。その中でも代表的な症状としては、

<身体的症状>

  • 下腹部痛
  • 胸の張り、痛み
  • 腰痛
  • 頭痛
  • 倦怠感
  • ニキビ
  • 肌荒れ
  • 吐き気

<精神的症状>

  • イライラする
  • 情緒不安定なる
  • 憂うつな気分が続く
  • 落ち着かない
  • 何か理由があるわけではないのに哀しくなる
  • 集中力が途切れる
  • ぼーっとする

などがあります。PMSは決して一部の女性にだけ起こる特別な症状というわけではなく、生理のある女性であれば誰でも経験し得る症状です。

海外では30年以上も前からPMSに関する研究が進められ専門的な治療を受けられる環境が整えられていますが、残念ながら日本においてはまだ海外ほどの水準には達していません。日本ではPMSという症状が広く世間に浸透してきたのも最近になってのことで、そのため生理に伴う不快症状に悩みつつも自身がPMSであることを自覚していない女性はいまだ多くいると言われています。

PMS(月経前症候群)についてさらに詳しく知りたい方は、ぜひこちらの記事も参考になさってください。

https://pill.online-medicine.or.jp/wp-admin/post.php?post=2499&action=edit

漢方ってどんなもの?

漢方とは、中国で生まれた中国医学を日本人の体質や気候に合わせ心身の不調改善に効果を発揮できるよう改良された日本独自の伝統医学です。6世紀ごろ中国から伝来した中国医学をもとに発展を遂げてきた漢方ですが、その歴史は何千年にもおよぶほど古いものとなっています。

漢方に限らず、治療はその人の体質や症状に適したものでなければ十分な効果は期待できません。そのため漢方では、個人によって異なる体質や症状に合った治療法を見極められるよう独自の物差しを採用しています

漢方で用いられる物差しは、主に以下の3つです。

  • 証(しょう)
  • 気(き)・血(けつ)・水(すい)
  • 五臓(ごぞう)

証とは

「証」はその人の体質や体力、抵抗力、症状の度合いなどから関連性のあるものを「症候群」として捉え治療する方法です。証では体力、抵抗力の強弱を表す「虚と実」という指標によって、個人ごとに異なる体質、症状を見極めていきます。

<虚と実>

虚証 体力や抵抗力が弱い、顔色が悪い、肌荒れしやすい、声がか細い、胃腸が弱い、寒がり
実証 体力や抵抗力が十分にある、筋肉質、血色・肌艶が良い、声量がある、胃腸が強いが便秘になりやすい、暑がり

風邪を引いて葛根湯を飲んだことがある方は多いかと思いますが、葛根湯は比較的体力があって胃腸が強い実証の人に対して用いる漢方薬です。葛根湯を飲んでお腹を壊したことがあるという人は、虚証である可能性があります。

気・血・水とは

「気・血・水」は、心身の不調の原因を見極めるために用いられるものです。漢方では人の身体を構成する要素は気・血・水の3つであるという考えを軸に、この3つの要素のバランスを保つことが心身の健康を保つことにつながると考えています。

ではこの漢方における人体の構成要素である気・血・水とは、どのようなものを指すのでしょうか。漢方では、気・血・水を以下のようなものと定義付けています。

気(き) 食物や大気から人体に吸収され、身体の正常化を保つエネルギー源となる目には見えない生命エネルギー
血(けつ) 血液などによって全身の細胞に運ばれる栄養素や酸素
水(すい) 血液を除いた汗や唾液、尿などの体液

この3つの構成要素は互いに影響を与え合う関係性にあり、病気はこれらのバランスが崩れることで起こるものというのが漢方の考え方です。診察では、この気・血・水の3つの状態を観察して、不調の原因がどこにあるのかを見極めていきます。

五臓とは

気・血・水に加え、漢方では身体を構成する物差しとして「五行」という考え方を用いています。五行とは、もともとは自然界の森羅万象を「木・火・土・金・水」の5つの物質に分類した哲学のことです。漢方では人も自然界の一部であるという考えのもとこの自然界の五行を応用し、人体を「肝・心・脾・肺・腎」の5つの要素に分類しています。

肝・心・脾・肺・腎は「五臓」と呼ばれ、それぞれが身体の生命活動を担う重要な役割を果たすものとされていますが、実はこの五臓は身体の臓器を指すものではありません。

漢方における五臓は身体の機能や役割、部位、臓腑などを大まかに分類したもので、それぞれは以下のような役割を担っているとしています。

運動神経系や感情のバランスをコントロールする、栄養物を蓄える、自律神経系の血流をコントロールする
血液循環や拍動、脳、感情をコントロールする
消化吸収、栄養物や水分の運搬、筋肉の栄養バランスをコントロールする
呼吸、水分循環、皮膚機能、防衛機能をコントロールする
生殖、成長発育、老化、水分代謝をコントロールする

気・血・水の3つの要素に加え、肝・心・脾・肺・腎の5つの要素のバランスが良好に保たれることで、人の身体は健康な状態を維持できるようになります。そのため不調が生じたら、まずはその原因がどこにあるのかを知ることが最も重要です。

漢方と薬との違い

漢方薬は自然由来の生薬※を用いて作られた薬であるため、原則として化学合成された物質は一切入っていません。一方西洋薬は人の手によって化学合成された物質がその大半を占めます。

また西洋薬の場合、薬に含まれる成分は基本的にはひとつだけです。そのため、ひとつの症状や疾患に対して強い効果を発揮します。一方漢方薬は2種類以上の複数の生薬を組み合わせて作られるのが一般的であり、ひとつの薬には多くの成分が含まれているのが特徴です。

西洋薬がひとつの症状に対して強い作用を示すのに対し、漢方薬はさまざまな症状に対してその効果を示すことができます。この点から漢方薬は自覚症状はあるのに病院で診察を受けても原因が特定できないような慢性型の病気や、体質が大きく影響しているような病気の治療に対して有効です。

一方病気の原因がはっきりしていて局所的な治療が行う必要がある場合や手術をしなければいけない場合、緊急的に治療を行わなければいけない疾患、重症の病気などの場合には西洋薬の方が治療効果を期待できます。

※生薬とは・・動植物を使って作られる自然由来の医薬品

PMSの症状に効果がある漢方

前提として、漢方はPMSの症状全般に効果を発揮するというものではありません。お腹が痛い、イライラする、気持ち悪いなどの悩んでいる症状ごとに服用することが大切です。

加味逍遙散(かみしょうようさん)

出典:漢方のツムラ 加味逍遙散(カミショウヨウサン)

加味逍遙散は産婦人科の三大漢方薬のひとつで、PMSや更年期障害などの症状の改善に有効です。体力がない人で肩こりやめまい、頭痛、のぼせ、汗っかきなどの身体的症状のほか、イライラや不安などの精神的症状に対しても効果を発揮します。

桃核承気湯(とうかくじょうきとう)

出典:漢方のツムラ 桃核承気湯(トウカクジョウキトウ)

桃核承気湯は、血流が滞る血行障害やうっ血などの症状を改善する代表的な実証の人向けの駆瘀血剤(くおけつざい)です。のぼせ気味で便秘傾向にあり、血の巡りが滞っている人に向いています。PMSや産後うつ、腰痛、痔、打撲などの症状に対して有効です。

桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)

出典:漢方のツムラ 桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)

桂枝茯苓丸も桃核承気湯同様血行障害を改善する代表的な駆瘀血剤で、産婦人科でよく処方される三大漢方薬のひとつです。体力が比較的あり、暑がりでのぼせやすいのに冷え性や下腹部の張りを感じている人に向いています。PMSや更年期障害、頭痛、めまい、肩こりなどのほか、にきびやしみ、湿疹、しもやけなどの皮膚症状の改善にも有効です。

当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)

出典:漢方のツムラ 当帰薬散(トウキシャクヤクサン)

当帰芍薬散は血の巡りを整えて身体を温める代表的な駆瘀血剤で、加味逍遙散、桂枝茯苓丸と並ぶ産婦人科の三大漢方薬のひとつです。PMSや更年期障害などのほか、産前産後に起こる貧血や疲労倦怠感、めまい、むくみなどの症状に対しても用いられます

虚証の人向けで、立ち眩みや頭が重い、肩こり、腰痛、冷え性、しみやけ、むくみ、しみ、耳鳴りなどの症状改善にも有効です。

五苓散(ごれいさん)

出典:漢方のツムラ 五苓散(ゴレイサン)

五苓散は水分代謝不良がもたらす症状に対して用いられ、むくみや頭痛、めまい、口の渇き、下痢、尿の減少などの症状改善に有効です。また虚・実のどちらの証の人にも向いていて、急性胃腸炎や暑気あたり、二日酔いによる吐き気や胃のむかつき、子供の下痢、妊婦のむくみなど、幅広い症状に対して用いられます。

抑肝散(よくかんさん)

出典:漢方のツムラ 抑肝散(ヨクカンサン)

抑肝散は五臓のひとつ、肝に対して作用する漢方薬です。漢方では肝が高ぶるとイライラや怒りっぽくなるなどの症状が現れると考えられていて、抑肝散はこの肝の高ぶりを抑制する効果を持ちます。体力が比較的ある人で、イライラする、怒りっぽい、興奮しやすいなどの精神的症状をはじめ、更年期障害や女性ホルモンの影響によって起こるPMSなどの症状、不眠症、歯ぎしり、神経症などの症状改善に有効です。

温経湯(うんけいとう)

出典:漢方のツムラ 温経湯(ウンケイトウ)

温経湯は女性特有の症状に対してよく用いられる漢方薬です。血の量が不足することで起こる血虚の改善に有効で、お腹や脈が弱い虚弱体質の人で、冷え性や手足のほてり、唇の乾燥、不妊などの症状に悩む人に向いています

半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)

出典:漢方のツムラ 半夏厚朴湯(ハンゲコウボクトウ)

半夏厚朴湯は気分の落ち込みを改善する代表的な気剤のひとつです。体力が比較的ある人で、不安感や不安神経症、ストレスによるのどの異物感などの症状改善に用いられます。また不安や緊張などがもたらす胃腸の不調に対しても有効で、妊娠期のつわりの改善にも効果を発揮します

購入方法

ここからは、漢方薬の購入方法について解説していきます。

医師からの処方

漢方薬はPMSの治療においてその有効性が認められているため、病院に行けば医師に処方してもらうことができます。医師が直接その人の体質や症状に合った薬を選び処方してくれるため、PMSの症状に悩んでいるけど自分ではどの漢方薬を選んだらいいのかわからないという方は医師に相談しましょう。

PMSの改善のために漢方治療を行う場合、診察費や薬代などの費用は保険適用となり3割負担となります。また保険適用の漢方薬は顆粒状に分封されているため、服用が手軽で持ち運びにも便利です。

市販で購入

漢方薬は薬局やドラッグストア、通販でも購入することができます。日本では医薬品は主に医療用医薬品と要指導医薬品、一般用医薬品の3つに分類されていて、市販の漢方薬はそのうちの一般用医薬品に該当する薬です。3つの医薬品は以下のような違いがあります。

医療用医薬品 医師が発行する処方箋に基づいて薬剤師が調剤する薬
要指導医薬品 処方箋は必要ないが薬剤師による指導や説明が義務付けられている薬
一般用医薬品 処方箋なしで薬局やドラッグストアなどで購入できる手軽な薬

医師の処方箋がないと処方できない医療用医薬品の漢方薬は症状や体質改善により効果を発揮するため、生薬が多く配合されています。一方で一般用医薬品の漢方薬は種類にはよるものの、副作用を抑えるため生薬の成分量が少ないのが特徴です。

漢方薬は西洋薬とは違いひとつの薬で多様な症状や疾患の改善が見込めますが、自分の体質や症状に合ったものを選ばなければ期待する効果は得られません。どの市販薬を選べばいいのか迷う場合には、薬剤師に相談するのが安心です

漢方以外のPMS治療法

PMSは漢方以外でも治療することができます。ここでは、漢方以外のPMS治療法をご紹介していきます。

非薬物療法

非薬物療法とは、主に軽症のPMS患者に対して行われる生活習慣の見直しに重点を置いた治療方法ですPMSはストレスによって悪化することが多いため、ストレスを軽減するためのリラクゼーションや適度な運動が症状改善に効果を発揮することがあります。

また過食や行き過ぎたダイエット、偏食などは心身に負担をかけPMSの症状悪化を引き起こすため、食生活の改善も有効な治療法のひとつです。ビタミンB6をはじめとしたビタミン類がPMSの改善に効果があることが認められているため、必要に応じてサプリメントや薬などでこれらの成分を摂取することもあります。

対処療法

対症療法とは、頭痛が出たら鎮痛剤、情緒不安定なら精神安定剤というように症状ごとに薬で対処していく治療方法です。対症療法も非薬物療法同様、比較的症状が軽度の場合に対して行われます。

苦痛を我慢するとそれ自体がストレスとなりPMSの悪化を招くことにつながるため、症状がある場合には我慢せず薬を柔軟に取り入れていきましょう。

SSRL(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)

SSRL(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)とは、PMSの症状が比較的重い人に対して使われる抗うつ薬の一種です。うつ病や不安障害のほかPMSの改善に有効ですがPMSに対しての処方には保険が適応されないため、うつ症状がある場合にのみ処方されます。

SSRIは生理前に減少する精神安定をコントロールする脳内の神経伝達物質、セロトニンを補充することでPMSによるうつや不安感などの精神症状の改善を促す薬です。SSRIはたった1回の飲み忘れでも、頭痛やめまい、全身倦怠感などの離脱反応が起こることがあります。そのため、薬の服用を中止する場合には徐々に薬の量を減らしていくことが大切です。

低用量ピル

低用量ピル(経口避妊薬)は女性ホルモンの量をコントロールすることで女性の身体を妊娠期の状態に近づけ、排卵を抑制するホルモン剤です。PMSの症状が重い人は体質に何かしらの問題があったり、ストレスが強すぎる傾向があるとされています。低用量ピルは体内の女性ホルモン量を薬によってコントロールするため、体質改善という根本的な治療が期待できるのが特徴です。

低用量ピルの日本での普及率はまだ高くはありませんが、海外ではPMSをはじめとした女性特有の疾患に対する治療薬、避妊薬として一般化している薬であり、安全性がすでに証明されています。

低用量ピルについてさらに詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考になさってください。

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低用量ピルはオンラインで購入できます

低用量ピルはPMSの症状改善のほか、避妊薬としても非常に高い効果を発揮します。以前は低用量ピルの処方を受けるには病院に行って医師の診察を受ける必要がありましたが、近年はオンライン診療が普及し低用量ピルもオンライン診療による処方が可能となりました。