「18トリソミー(エドワーズ症候群)ってなに?」
あなたは今、そのようにお考えではないですか?
自分の子供が「18トリソミー」かもしれないと知った時、具体的にどのような症状なのか心配になりますよね。
そのようなお悩みを抱えている方に「18トリソミーの特徴・症状」を現役の医師が詳しく解説します。
また18トリソミーの発症確率や診断方法もご紹介するので、18トリソミーについて理解し、不安を解消することが可能です。
今回は18トリソミーの原因から、特徴・症状、子供が「18トリソミー」と診断された時の対応方法までご紹介します。
18トリソミーのことを理解して「不安」を解消することに、この記事がお役に立てれば幸いです。
メディオンクリニックでは18トリソミーの出生前診断に関する無料相談を行っています。お悩み・おすすめの病院などお気軽にご相談ください。
目次
18トリソミー(エドワーズ症候群)とは
18トリソミー(エドワーズ症候群)とは、3500~8500人に1人の確率で発症し、18番目の染色体が1本多いことで引き起こされる「先天異常症候群」です。女児に多いとされてます(男:女=1:3)。
染色体は「体の形状」や「身体機能」を決める遺伝情報を持っており、通常1~23番までの染色体を2本ずつ持って生まれます。しかし18トリソミーの胎児は18番目の染色体を3本持って生まれてきます。
一般的に、「18トリソミー」を持つ患児は寿命が短いとされており、知的障害や身体的異常が見られます。
18トリソミー(エドワーズ症候群)の種類
18トリソミー(エドワーズ症候群)には、以下の3つの種類があります。
標準型
染色体異常を起こし、受精卵の細胞に13番目の染色体が「3本」含まれている種類の「18トリソミー」を標準型といいます。
通常の受精卵は2本の染色体しか含まれていませんが、染色体以上を起こしてしまうと、1本多く染色体が含まれてしまいます。
18トリソミー患児の93.8%が標準型であり、親の遺伝に関係せず発症するのが現状です。
モザイク型
モザイク型は、18番目の染色体が「3本ある異常な細胞」と「2本ある正常な細胞」があわさった種類の18トリソミーです。18トリソミー患児の4.5%はモザイク型になります。
モザイク型は「正常に分裂できた受精卵の細胞」と「異常を起こした細胞」が混在しているので、他の種類の18トリソミーと比べて症状が軽い傾向にあります。
モザイク型の18トリソミーも親の遺伝に関わらず、発症してしまいます。
転座型
転座型は、18番目の染色体が他の染色体の一部と交換されたり、欠けた染色体同士が付着したりする種類の18トリソミーです。
18トリソミーを発症する人の1.7%が転座型に該当します。
転座型の18トリソミーは、どちらかの親が「転座型の染色体」を持っていることで引き起こされます。
18トリソミー(エドワーズ症候群)の特徴・症状
18トリソミー発症している患児には、以下の特徴・症状が現れます。
身体的な異常がみられる
主に以下の身体的な異常などがみられます
- 指が重なるように位置している
- 胸骨が短い
- 揺り椅子状の足底
- 手の指が多い
この他にも足の親指が短く曲がっていたり、足や足首が内向きになっていたりすることもあります。
妊婦健診のエコー検査で、上記の身体的異常を見つけ「18トリソミー」と判断することも少なくないです。
合併症になりやすい
主な合併症として以下が挙げられます。
- 先天性心疾患:心房中隔欠損、動脈管開存
- 呼吸器系:横隔膜弛緩症、無呼吸発作
- 消化器系:食道閉鎖症、臍帯ヘルニア
- 泌尿器系:水腎症、鼠経ヘルニア
- 骨格系:関節拘縮
- その他:難聴、屈折異常、悪性腫瘍
特に心疾患は、18トリソミー患児の90%が発症し、短い命で亡くなる大きな原因となっています。また体の多くに奇形が現れたり、悪性腫瘍が発生する可能性も高いです。
しかし合併症が多く発症しない場合や、重症となる病気にほとんどかからないなど、個人によって大きく差が出てきます。20歳以上の生存も確認されているため、治療を行って長く生きることが絶対にできないわけではありません。
発育が遅い
身体機能や認知機能の遅れが顕著にみられます。
しかし、独力での移動やコミュニケーションが可能になることも僅かながら確認されてます。
下記表は、88名の18トリソミー患児を対象にした「日本の18トリソミー会の調査報告(2005)」と天使病院のデータによる、「発育期間の目安」です。
日本人の平均 | 18トリソミー患児の平均 | |
首が座る | 4ヶ月 | 1年5ヶ月 |
寝返り | 6ヶ月 | 1年4ヶ月 |
ひとり立ち | 12ヶ月 | 3年3ヶ月 |
文章を話す | 3年 | 4年 |
18トリソミー患児の発育は、個人によって大きく異なります。また調査中に亡くなっているため、一般的にいえる発育期間ではないのも現状です。
顔貌に特徴がある
18トリソミーの患児は、「彫り」が浅く「口と顎」が小さく、瞼の裂け目が短い「やつれた」ような顔貌をします。
また耳の位置が低かったり、頭が小さかったり、後頭部突出している場合もあります。
寿命が短い
18トリソミーを持つ患児は、「寿命が短い」という特徴があります。
ある調査研究によると、1999年から2007年に出生した「18トリソミーの子供」1,113人のうち、87.7%は5年以内に亡くなっていることが示されています。
また多くの18トリソミー患児は、80%の確率で1ヶ月以内に亡くなることが知られています。
しかし最年長で「20歳を超えている」18トリソミー患者も存在するので、必ずしも「長生きができない」と言い切れないのも確かです。
18トリソミーの原因
18トリソミーは、受精卵の「減数分裂」と「体細胞分裂」が正常に行われないことが原因で発生します。
減数分裂は、受精卵を作るための「精子と卵子」がそれぞれ持つ2本の染色体を、1本ずつに減らす工程のことです。
この減数分裂が上手くいかず、受精卵の18番目の染色体が3本になってしまい、18トリソミ(標準型)になってしまいます。
体細胞分裂は受精卵を成長させるための分裂工程ですが、この体細胞の分裂が上手く行かず18トリソミー(モザイク型)になってしまいます。
「減数分裂」や「体細胞分裂」が上手く行かない原因は解明されていませんが、自身の遺伝とは関係なく確率的に起こってしまうことが分かっています。しかし転座方の「18トリミソー」は染色体異常の遺伝が原因ですが、染色体異常を治すことは難しいです。
18トリソミー(エドワーズ症候群)の発症確率
18トリソミーの発症確率は、「母親の年齢」と「妊娠週間」が大きく関係しています。
下記表は、縦が「母親の年齢」横が「妊娠週間」の18トリソミーの発症確率を表しています。表内の数字分の1をした値が「18トリソミーの発症確率」です。
(画像引用)
例えば、母親の年齢が40歳で、妊娠習慣が16週間の場合、「1/227」の確率で18トリソミー発症が起きる確率があるということです。
表を見てみると分かる通り、年齢が増えるほど18トリソミーになる確率が高く、妊娠週間が長いほど確率が低くなります。
しかし妊娠週間が長いほど確率が低くなるのは、子宮内で亡くなってしまっているため確率が減少されています。
18トリソミー(エドワーズ症候群)の診断方法
18トリソミーの診断方法には、以下の2つがあります。
出生前診断
出生前診断は、妊娠中に18トリソミーの判定をする検査です。
出生前診断には主に5つの種類があります。
NIPT(新型出生前診断) | 母体の血液に含まれる胎児の細胞から「18トリソミー」を判断する非確定検査。精度は97%以上 |
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クアトロテスト | 母体の血液中の4つの成分から「18トリソミー」を判断する非確定検査。陽性判定確率は、75%~80% |
コンバインド検査 | エコーと母体の血液から判断する非確定検査。 |
羊水検査 | 非確定検査が陽性の場合、母体の子宮から針で羊水を抽出し成分を調べる確定検査。精度は99%以上だが0.3%の確率で流産の恐れがある。 |
絨毛検査 | 非確定検査が陽性の場合、胎盤の一部を針で採取して調べる確定検査。羊水検査より早期に検査ができるが、1%の確率で流産の可能性がある。 |
出生前診断を行うことで、高い確率で胎児が「18トリソミー」であるかを判明します。
しかし診断結果が陽性で、「18トリソミー」であると診断された場合のことを、決めておくことも重要です。重大な判断に迫られ、思い悩んでしまう人は少なくありません。
出生前診断をする前に、もし子供が18トリソミーであった場合どうするのかを決めることをおすすめします。
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出生後の血液検査
出生後の血液検査は、生まれた子供の血液から遺伝子情報を検査する方法です。
主に、出生前診断の時に陰性で出生後の外見が18トリソミーの疑いがある場合に「血液検査」が行われます。
18トリソミー(エドワーズ症候群)の治療方法
18トリソミーを完治させる治療方法はありません。
しかし心臓や消化器系の合併症を、手術などの手厚い医療措置で治療することで、長く生きる患児もいることが確認されています。
そのため子供の生命が続く限り、医療ケアを施してくことが重要です。
子供が18トリソミーと診断された時の対応
産む・中絶を選ぶ
出生前診断で陽性が出た場合、産むのか・中絶をするのかを決める必要があります。
ある調査では2014年の4月からの1年間で「出生前診断」を7,740人が利用し、142人の染色体異常の「陽性」が確認されました。そのうち「確定陽性」が判定された97%の110人が人工中絶をしているとを示しています。中絶を選ぶ理由は「身体的にも経済的にも産み育てるのが難しい」など様々です。
一方で確定検査をせずに「出産」を決意する方もいらっしゃいますし、確定検査をして陽性が判明してから決意する方もいます。
いずれにしても、出生前診断をしてから出産をするか決めると、自分の子供が「18トリミソー」であるショックで冷静な判断をできなく恐れがあります。
そのため出生前診断をする前に、産むのか・中絶をするのかを選択することが重要です。
医師に相談する
18トリソミーを持つ子供は、医師の援助なしに生きていくことは難しいです。
そのため「18トリソミー」と診断された場合、医師と相談して「どのように子供を迎え入れるか」「どの病院だと治療を受けられるか」などを決めていく必要があります。
そして、18トリソミーを持つ子供を迎え入れる「親の心の準備」も、進めていくことが重要になっていきます。
また18トリソミーは医療費助成の対象です。金銭的に出産するのが難しい方はぜひ詳しくみてください。
他のトリソミーとの違いは?
21トリソミーと18トリソミーの違い
21トリソミー(ダウン症)とは、21番染色体を1本余分に持って生まれることで発症する先天性疾患です。
平均寿命は60歳までと他の染色体に関する病気と比べて、長く生きることができます。
主な症状・特徴は、「特有の顔つき」「発育が遅い」「合併症にかかりやすい」「感受性が豊か」などが挙げられます。
13トリソミーと18トリソミーの違い
13トリソミー(パトウ症候群)とは、13番目の染色体を1本余分に持って生まれることで発症する「先天的な染色体異常症」です。
18トリソミーと同じで、生後1ヶ月以内に80%の患児が亡くなり、1年間生存できる確率は10%です。
また10人に8人は「重度の心奇形」を持って生まれます。脳が2つに分裂しないことが多く、それにより顔の特徴に影響を与え、「口唇口蓋裂」「小眼」「片目がない」などの顔や頭の異常が起こります。
18トリソミー(エドワーズ症候群)との大きな違いは、出生時の体重です。18トリソミーを持つ患児は体重が少ないですが、13トリソミーを持つ患児は一般的な児と変わりません。
18トリソミー(エドワーズ症候群)まとめ
この記事では。18トリソミー(エドワーズ症候群)について解説しました。
18トリソミーは重い病気ですが、充実した医療ケアを続けることで「長く生きる」可能性があります。出産を夫婦だけで決断することは難しいですが、医師への相談をしていただくと幸いです。
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