「体外受精で妊娠する確率ってどれくらい?」
あなたは今、そうお考えではありませんか?
不妊治療を始めたけどまだ妊娠できていない。体外受精を考えてるけど妊娠できるのかな?
もし、体外受精で妊娠できる確率が分かったら理想的ですよね。
そんなあなたに朗報です。
この記事では「体外受精での着床率・妊娠率」について現役の医師が詳しく解説しています。
さらに、「体外受精の着床率・妊娠率を上げる方法」についても解説するので、体外受精に対する不安がなくなります。
体外受精で妊娠する確率を理解して不妊治療を進めるために、この記事がお役に立てば幸いです。
目次
体外受精での着床率・妊娠率
女性は12歳前後の初めて生理がきた時点(初経)で約30万個の卵子を持っています。そこから新たに卵子が作られることはなく、35歳になる頃には1万個~3万個にまで減少します。年齢とともにゼロへと近づき最終的に閉経を迎えます。
体外受精に限らず、女性の妊娠率は一般的に年齢とともに下がっていき、その原因の一つが加齢による卵子数の減少です。
年齢によって妊娠率は大きく異なるので年代別に妊娠率を紹介します。
20代
20代後半は最も妊娠する能力が高く、移植した胚あたりの着床率は41.7%です。1回の体外受精あたりの妊娠率は50.8%と半数以上の方が妊娠に成功しています。
妊娠を急ぐ意味で体外受精を用いられる方もいらっしゃいますが、妊娠する能力が高いため人工授精を繰り返すだけで妊娠できる場合も多いです。
加齢による妊娠率の低下を焦る必要が少ないため、体外受精だけでなく、複数の方法を検討してみてはどうでしょうか。
30代
20代後半で妊娠能力のピークが過ぎ、30代に入ると妊娠能力が減少し始めます。
30代前半のうちは妊娠能力の減少はそこまで顕著ではなく、移植した胚あたりの着床率は34.8%、体外受精1回あたりの妊娠率は45.0%と、半数近くは妊娠に成功しています。
35歳を過ぎてから急激に妊娠能力が衰え始め、胚あたりの着床率は23.7%、体外受精1回あたりの妊娠率は32.0%と、3人に1人しか妊娠に成功していません。
30代は年齢を重ねるごとに妊娠率が急激に下がっていくため、少しでも早く妊娠することが望ましいです。妊娠までの期間を早めるという意味でも体外受精は有効な手段であると言えるでしょう。
40代
40歳を過ぎると卵子の老化によって染色体異常が起こりやすくなるため、妊娠率が急激に下がり、流産する確率が高くなります。
40代後半になると体外受精を行なっても妊娠することが極めて難しく、日本産科婦人科学会のデータによると治療者のうち出産できた割合は40歳で8.8%、45歳で0.8%でした。
すでに妊娠しにくい年齢のため、タイミング法や人工授精などの効果は薄く一刻も早く体外受精に取り組む必要があります。
体外受精で妊娠するまでの回数
引用:メディカルパーク湘南
体外受精における1回の成功率は3割しかないため、複数回受けることを前提とする必要があります。
そのため、費用の負担が大きくなったり、35歳以上の方は加齢が進むことによる妊娠能力の低下などが問題になります。
体外受精の着床率・妊娠率を上げる方法
タイミング法や人工授精に比べて妊娠率の高い体外受精ですが、妊娠に成功する人は多くはありません。妊娠率を上げて一刻も早く妊娠するためにできる方法を4つ紹介します。
- 卵巣刺激のやり方を変える
- 冷血融解胚盤胞移植を行う
- アシステッドハッチング(AHA)を行う
- 着床診断を受診する
卵巣刺激のやり方を変える
卵巣刺激の種類は主に4つに分かれており、次のような特徴があります。
卵巣刺激方の種類 | 採卵できる卵子数 | |
高刺激法 | ウルトラロング法 ロング法 ショート法 アンタゴニスト法 | 多い |
中刺激法 | フェマーラ-hMG法 | 3~7個 |
低刺激法 | クロミッドhMG法 フェマーラ-hMG法 | 数個 |
自然周期法 | 排卵誘発剤は使用しない | 1個 |
どれが良いというわけではありませんが、人によって最も最適な方法は異なります。
そのため、卵巣刺激法のやり方を複数用意している病院を選ぶことが妊娠率の向上に繋がります。
冷血融解胚盤胞移植を行う
冷血融解胚盤胞移植は培養した胚を凍結して液体窒素のタンク中に保存する方法です。
-196°Cの超低温にすることで細胞の代謝が止まります。胚の質が劣化することがほぼ無くなるため着床率が上がると考えられています。
木場公園クリニックのデータによると、冷血融解胚盤胞移植はそのまま胚を移植する方法に比べて着床率が20%以上高く、妊娠率も10%程高いことがわかっています。
1回の妊娠率が高い方法を選択することは妊娠までの期間を早める事に繋がるため、妊娠能力の減少が大きい高齢の方ほどメリットがあります。
アシステッドハッチング(AHA)を行う
2020年4月に発表された論文によると、卵子を覆っている透明帯を取り除くことで受精しやすくなる可能性があることが分かりました。
レーザーや薬品によって透明膜を除去する方法をアシステッドハッチング(AHA)と呼び、複数の病院で取り入れられています。
透明膜を除去したグループと除去しなかったグループを異常受精卵を用いて比べると、除去しなかったグループは全く着床しなかったのに対して、除去したグループは30%が着床に成功したことが報告されています。
このため、体外受精を繰り返し行っても受精卵の発育がうまくいかない患者さんにとって見込みのある新しい培養方法といえます。
着床前診断を受診する
胚を子宮に戻す前に受精卵の遺伝子や染色体を調べる検査を着床前診断と呼びます。
着床前診断を利用することであらかじめ異常のある胚を見つけることができます。正常な胚を選別して子宮に戻すため、妊娠率が2倍以上向上する可能性が分かっています。
このため、卵子の老化によって染色体異常が多くなる、高齢の方にとって着床の可能性が見込める方法になります。
ただし、まだ臨床研究を行なっている段階で対象者も少ないことに注意が必要です。

体外受精 確率 まとめ
この記事では体外受精の確率について解説しました。
この記事のまとめ
- 着床率・妊娠率は年齢とともに下がる
- 20代後半が妊娠能力のピークで35歳以降急激に低下する
- 40代は体外受精を行なっても妊娠が難しくなるため治療を急ぐ必要がある
- 1回の体外受精により妊娠するのは3割しかない
- 新しい方法を利用することで高齢の方でも妊娠率を上げることが可能である
年齢とともに妊娠することが難しくなり、体外受精を行なっても妊娠できる保証はありません。しかし、体外受精のやり方を変えたり最新の方法を使うことで妊娠率を向上させることができます。
体外受精に対する不安を解消するために、この記事がお役に立っていれば幸いです。