中絶費用は平均30万円程度かかるので、保険が適用できるのか気になるところですよね。
少しでも負担を減らすために、利用できる保険制度は利用しておきたいものです。
今回は、中絶するに当たって保険が適用できる範囲はどこまでなのか、自己負担はどのくらいになるのかを解説します。
目次
保険の制度はどのようなもの?
まずは、保険制度について確認してみましょう。中絶に使用できる保険制度にはどういったものがあるのでしょうか。種類や要件を細かく確認していきましょう。
保険制度の種類
中絶手術に関連する可能性のある保険をまとめてみました。
- 一部負担金
- 出産育児一時金
- 出産手当金
- 限度額適用認定証
- 高額療養費
上記が利用できる可能性のある保険です。以下で実際に利用できる要件についてご紹介。
保険制度を利用できる要件
中絶手術の中には、健康保険が適用できる要件もあります。
- 胎児が子宮内で死亡し、手術が必要となった時
- 妊娠により母体が命の危険に晒されている時
治療の一環として中絶手術を行う場合であれば、健康保険が適用になります。母体が命の危険に晒されたり妊娠が治療の邪魔になってしまうなどの理由があれば、病気の治療と判断されるので保険が適用され、自己負担はかなり少なく済むでしょう。
この場合、一部負担金、限度額、高額療養費は対象外となるので注意が必要です。
中絶手術で利用できる保険制度は?
中絶手術を行う際にも利用できる保険制度はあります。しかし、保険が適用できるケースとできないケースがあるので、事前に確認をしておく必要が。妊娠初期と中期で異なるので、中絶を行うタイミングがどこに該当するのか確認してみましょう。
中絶手術で利用できる保険制度
中絶手術で利用できる保険制度はどんなものがあるのでしょうか。妊娠初期と妊娠中期に分けて解説します。
妊娠初期
妊娠初期の段階での中絶に利用できる保険はありません。中絶費用は平均して15万円前後となり、全額が自己負担となります。もちろん、病気の治療などの例外を除いてにはなるものの、基本的には負担が必要になると覚えておきましょう。
妊娠中期
妊娠中期に行われる中絶は、陣痛を誘発し分娩を行います。費用は、25万円~60万円程度になります。また、中期に中絶する場合には手術代以外にも、様々な検診費用が発生。検診費用や胎児の埋葬費用なども必要に。
しかし、妊娠中期での中絶は保険を適用できるケースもあります。所得税法207条によると、妊娠中絶の費用のうち、母体保護法の規定に基づいて医師が行う妊娠中絶に係るものは、医療費控除の対象になるとされています。
出産一時金や出産手当金の利用が可能になある可能性があるので、病院に確認してみましょう。
保険適用の対象外になる範囲
人工妊娠中絶手術は、基本的に健康保険は適用されません。窓口で保険証を提示しても3割負担となることはないでしょう。手術代や前後の検診費用が全額自己負担となるので、お金の用意が必要です。
現金が手元にないという方は、クレジットカードが使える病院などを探し、受診するようにしましょう。
例外的に保険適用になるケース
保険が適用になる場合は、病気の治療の一環だと判断された場合のみになります。妊娠の継続が母体の命に影響する場合や治療の妨げとなっている場合に適用。負担は3割で済むでしょう。
また、治療費が高額となった場合は健康保険だけでなく高額医療制度が利用できる可能性もあります。必ず病院や自治体に確認するようにしましょう。
保険制度の申請方法
保険制度の申請方法についてご紹介します。保険適用となった場合に参考にしてくださいね。
出産育児一時金
健康保険に加入している方であれば、出産育児一時金を受け取ることが可能に。金額は子ども1人につき、42万円になります。双子だった場合は、2人分に該当する84万円が支給。
出産にかかった費用が42万円以下だった場合は、差額を口座に振り込んでもらうことが可能です。また、振込までにかかる期間は請求後1〜2ヵ月後になります。
出産育児一時金は出産日の翌日から2年間の有効期限が設けられているので、注意してくださいね。
出産育児一時金を受け取るためには出産育児一時金支給申請書を記入が必要に。以下が申請書に必要となる情報です。
- 申請者の住所・氏名・連絡先
- 被保険者証記号番号
- 分娩者の名前
- 生まれてきた子どもの名前と生年月日
- 出産育児一時金の金額
- 分娩を行った医師や助産師の名前と住所
- 分娩の状態
- 振込指定口座
申請書を提出する場所は、健康保険の種類によって異なります。国民健康保険に加入している場合は各自治体へ申請書を提出しましょう。企業の健康保険に加入している(または扶養に入っている)場合は、企業の担当者に相談し申請書をもらい、会社の担当者に送付してくださいね。
しかし、直接支払い制度や受取代理人制度を利用することが多いので、自分で全て申請を行うことはあまりないでしょう。大規模な病院であれば、直接支払制度が用いられるケースがほとんどです。
小規模な病院を受診している場合は、受取代理制度の使用となるでしょう。受診する医療機関によって異なるので、事前に医療機関に確認してくださいね。
直接支払い制度の場合
直接支払制度は、本人に代わって医療機関等が健康保険組合に出産費用を請求する制度。健康保険組合は、被保険者に支給する出産育児一時金を医療機関に支払うことになります。この制度を利用したことで、窓口で支払う料金は出産育児一時金を超過した金額のみに。
医療機関に保険者が直接金額を支払ってくれる仕組みなので、負担が少なくありがたい制度ですよね。
直接支払い制度を利用するためには、同意書が必要になります。妊産婦本人に代わって医療機関などの分娩機関が代理で行うことを確認する文書。主な内容は以下の通りです。
- 日付
- 保険者名
- 被保険者の氏名
- 妊産婦の氏名
出産一時金の申請時と比較すると記入する内容はかなり簡単で、項目も少ないですね。
受け取り代理制度の場合
直接支払制度と内容はほぼ同じ。しかし、申し込みは妊婦本人で行うという点が直接支払い制度とは異なります。小規模で人手が足りない医療機関で用いられることが多く、以下が主な流れになります。
- 妊産婦が医療機関から、受取代理申請書を受け取る
- 妊産婦が自分の加盟する保険の保険者に申請書を提出
- 保険者が医療機関に対して、受取代理申請の受け取り通知書を送付
- 妊産婦が医療機関で出産
- 医療機関が保険者に出産費用請求書や出産事実証明書などを送付
- 保険者が医療機関に出産育児一時金を支払う
厚生労働省から受取代理制度を導入している機関の一覧表が出ているのでチェックしてみましょう。
出産手当金
出産のため仕事ができず給料がもらえなくなった場合、該当期間の生活保障として出産手当金が支給されます。出産の日が出産予定日より遅れた場合も、 追加で該当期間分支給されるので安心ですね。
- 給付期間
分娩日(分娩日が分娩予定日後であるときは、分娩予定日)以前42日(多児妊娠の場合は98日)から分娩の日後56日までの間欠勤した期間分が給付されます。
- 給付金額
被保険者期間1年以上の場合、被保険者が給付を受ける月以前12ヵ月間の各月の標準報酬月額の平均額の1/30の3分の2
被保険者期間が1年未満の場合、支給開始日直近の継続した各月の標準報酬月額を平均した額の1/30に相当する額
もしくは、加入している健康保険の平均標準報酬月額の1/30(平均標準報酬日額)に相当する額
上記のどちらか、少ない額の3分の2に相当する額が支給されます。
中絶した人が未成年の場合や仕事をしていない場合は?
家族の扶養に入っているのであれば出産育児一時金の申請が可能になります。 加入している保険組合によって異なるので、詳細は問い合わせて確認するようにしましょう。
保険制度が利用できなくても妊娠初期で決断を
妊娠中期になった方が保険適用になるため、金銭的な負担が少ないように見えますが、保険制度で支給される金額よりも遥かに医療費が高額になります。
また、妊娠初期段階の中絶よりも手術が難しくなり、大きな規模の病院でないと手術ができないというケースも。中絶費用が高いだけでなく母体に大きなリスクがあることも知られています。また、妊娠中期での中絶になると死産扱いとなり、役所への手続きや埋葬などが必要に。
中絶費用や母体への負担、手続きの少なさからも、妊娠中機での中絶よりも妊娠初期に中絶を行う方が良いということがわかるでしょう。妊娠初期の段階で決断してくださいね。