「モザイク型ダウン症は他のダウン症と比べて違いはあるのかな?知りたい」
あなたは今、そうお考えではありませんか?
高齢出産でダウン症について不安がある。モザイク型についても理解を深めたい。
もし、モザイク型ダウン症に特化して分かりやすくまとめられていたら理想的ですよね。
そんなあなたに朗報です。
この記事を読めばモザイク型ダウン症の特徴と全体像を理解出来ます。
確かに、モザイク型ダウン症の症例は少ないため、モザイク型に詳しい人は多くありません。しかし、この記事では現役の医師がモザイク型ダウン症の特徴について、研究結果をもとに詳しく解説します。
しかも、モザイク型ダウン症の特徴だけでなく、モザイク型ダウン症の患者さんとその家族が実際にどのような人生を歩むのかについても解説しますので、モザイク型ダウン症についての心配がなくなります。
今回は、モザイク型ダウン症の特徴、原因、患者さんの予後について解説していきます。
モザイク型ダウン症のことを深く理解して不安を軽減するために、この記事がお役に立てば幸いです。
目次
モザイク型ダウン症の特徴・症状
ダウン症には「標準型」「転座型」「モザイク型」の3つの種類があります。
転座型は親がダウン症患者の場合に発症する遺伝性のものですが、親が正常な場合に発症する標準型、モザイク型にはどのような違いがあるのでしょうか。この2つの違いについて解説していきます。
標準型・転座型に比べてIQが高い
ダウン症患者は正常な人に比べてIQが低い傾向がありますが、モザイク型ダウン症の患者は他のダウン症患者に比べてIQが高い可能性があると言われています。
実際に1991年にアメリカで行われた研究では、モザイク型のダウン症の子供30人とモザイク型でないダウン症の子供30人をのIQを調べた結果、モザイク型の子供の平均IQの方がモザイク型でない子供の平均IQよりも高いという結果が出ています。
また、2018年に日本で行われた行われた研究でも同様の結果を示しています。
ただし、「これらの結果は検証したグループ内でのIQのバラつきが大きいため、これらの研究結果からモザイク型の方がIQが高いと示すには根拠が弱い」とDSE(ダウン症教育インターナショナル)は述べています。
現時点では、モザイク型の子供の方がIQが高い可能性はあるものの、研究が進んでいないため、まだ確証は得られていません。
発達の遅れが少ない
一般的にダウン症の子供は正常な子供に比べて発育が遅い傾向があります。
ただし、モザイク型は標準型のダウン症に比べて発育の遅れが少ないのが特徴です。実際に研究結果から複数の発育領域において発育の遅れが少ないことが分かっています。
以下の表は、研究によって発育の遅れの少なさが認められたものを○、遅れが変わらなかったものを△で示し、日本の平均小児とダウン症児の平均を引用してまとめたものです。
ダウン症児の平均 | モザイク型 | 日本人の平均 | |
首が座る | 4ヶ月 | ○ | 3~4ヶ月 |
寝返り | 6~7ヶ月 | △ | 5~6ヶ月 |
一人座り | 11~13ヶ月 | ○ | 7~8ヶ月 |
はいはい | 12~13ヶ月 | ○ | 8~9ヶ月 |
ひとり立ち | 19~23ヶ月 | ○ | 12ヶ月 |
独歩 | 22~27ヶ月 | ○ | 14ヶ月 |
ダウン症児の平均 | モザイク型 | 日本人の平均 | |
有義語を2~3語話す | 21~27ヶ月 | △ | 12ヶ月 |
2語文を話す | 40~44ヶ月 | △ | 2歳 |
文章を話す | 49~55ヶ月 | △ | 3歳 |
これに関しては、モザイク型の方がIQが高いことに関して懐疑的であったDSE(ダウン症教育インターナショナル)もその可能性を見出しています。
発症確率が低い
ダウン症の子供が生まれる確率は平均で0.18%程であり、国立成育医療研究センターによると、ダウン症の子供は日本で年に2200人ほど生まれていると言われています。
ダウン症の中でもモザイク型ダウン症である割合は2%ほどのため、日本では年に44人程であると推測されています。県に1人いるかいないか程度と考えると発症確率が極めて低いことがわかります。
また女性の年齢が上がるにつれて子供がダウン症になる確率が高くなることも分かっています。
「NIPT Japan」より引用
上の図を見ると、20歳で出産する場合子供がダウン症になる確率は0.06%とかなり低いのに対し、45歳の場合10%と高くなっている事から、高齢出産にはリスク事が分かります。
モザイク型ダウン症の原因
通常、胎児は卵子と精子から1本ずつ染色体を受け取り計2本の染色体を持った細胞を持って生まれます。
ところが、細胞分裂をする時に何らかの異常が起き、染色体が分離する事が出来ないことで、染色体を3本持った細胞(トリソミー)と1本しか持たない細胞(モノソミー)が生じてしまうのです。
モノソミーは細胞の選択性によって淘汰されることが多いのですが、トリソミーは淘汰されないため、46本の染色体を持つ細胞と47本の細胞が混在します。
ダウン症は21番染色体が3本生じること(21番トリソミー)が原因です。21番トリソミーを、持つ細胞と持たない細胞が混在することでモザイク型ダウン症を発症します。
トリソミーが出来る詳しい原因は明らかになっていませんが、標準型、モザイク型ともに遺伝とは関係ないことが分かっています。
モザイク型ダウン症患者の生活
実際にモザイク型のダウン症を持つ子供を産んだらどうなるのか。モザイク型ダウン症は標準型と比べて生活に目立った違いはない為、ここでは一般的なダウン症患者の生活について解説します。
乳幼児期の生活
ダウン症の赤ちゃんの生活は寝て起きて、飲んでウンチする、これの繰り返しです。ダウン症のない赤ちゃんと何も違いはありません。
ただし、他の赤ちゃんに比べてより注意しなければならないポイントが3つあります。
- 成長が遅いことに焦りを感じない
- 療育を行う
- 定期的に病院に通う
1つ目は成長を地道に待つという事です。普通の子に比べてダウン症の子供は成長スピードが緩やかです。モザイク型の場合、標準型に比べるとこの傾向は少ないものの、遅いことに変わりはないため、焦ってはいけません。
例えば母乳をうまく飲めなかったり、歩くのや話すのが普通の子より遅かったり、扁平足で歩くのが疲れやすく、転びやすかったりなど、他の子が出来ていることがダウン症の子には難しいのです。
2つ目は療育を行う事です。成長が遅いため、療育という特別な訓練を行う必要があります。療育では、寝返りから正しい姿勢で歩くための基本的な理学療法、着替えや食事などの基本的な生活、会話の練習などを総合的に学びます。
3つ目は病院に通う事です。ダウン症の子供は他の子に比べて様々な合併症が起こるリスクが高いです。便秘というだけでも病気や甲状腺機能の低下を疑う必要があったりなど、日頃から注意して見守る必要があります。また気になることがあればすぐ病院を受診し、3~6ヶ月毎に病院に通います。
このように注意するポイントはあるものの、障害のある子を対象にした施設や児童相談所などの公共機関が用意され、ダウン症の子供をサポートする環境が日本にはあるのです。
学校での生活
小学校に入ると特別支援クラスに入る子と普通クラスに入る子に別れることが多いです。
ダウン症を持っていて普通のクラスの学校生活は大丈夫かと心配になるかと思います。しかし、学校の制度が整えられており、クラスの子供もサポートしてくれるため、安心して送り出すことが出来ます。さらに、登下校の際も、一緒に登下校する余裕がない場合は移動支援制度というものもあるため心配の必要はありません。
ただ、小学校を卒業して学習が本格化していくと周りの子と差が出て来るため、このタイミングで普通クラスから特別支援学校に変えるケースが多いです。
思春期を迎えると次第に異性への興味を持つようになります。ダウン症の子も他の子と同様にデートをして楽しみます。この時期から親元を離れ、友人やスタッフの人と行動するようになります。
卒業後の生活
学校を卒業後も手厚いサポート制度が複数あります。
ダウン症患者が働ける施設が用意されているだけでなく、昔に比べて一般企業に就職するダウン症患者も増えつつあります。
また、就職だけでなく、オープンカレッジという知的障害者のための学習機関に進む人や、専門学校、大学を目指す人もいるなど、選択肢が豊富に用意されています。
スポーツや芸術の世界で活躍する方も多くいられます。知的障害のある人のためのスペシャルオリンピックスに所属しているかたや、芸術において世界から認められる方も存在していて、ダウン症患者の活動の幅が広がっています。
このように、ダウン症の患者さんもサポートを受けながら自立していく割合も多く、人生を楽しまれています。
高齢期の生活
医療の進歩によってダウン症患者の寿命も伸びてきています。平均寿命は約60歳まで伸びており、80歳近くまで生きる方もおられます。
しかし、ダウン症の方が高齢になると急速に身体機能が衰え、自立して生きることが難しいのが現状です。合併症も起こりやすく、70%以上のダウン症患者が何らかの合併症を発症していると言われています。
自分が先に死んで面倒を見れなくなったらどうしようという不安を持つ方は多いですが、ダウン症高齢者に対応した制度が整えられています。
家族の生活
ダウン症の子を持った親や兄弟はどうすれば良いのでしょうか?本当に自分に育てられるのかどうか、仕事をやめて子供の面倒を見なければいけないのか、兄弟に迷惑がかかるのではないか、そのような不安は尽きることはありませんが、安心して大丈夫です。
日本ではダウン症患者に対する支援制度が多く整えられています。それでも自分ではどうしようもなくなった場合でも人の手に委ねるという選択肢も用意されています。
モザイク型ダウン症 まとめ
モザイク型ダウン症の特徴や原因、ダウン症患者の予後について解説しました。ダウン症はまだ研究が進んでおらず、分からないことも多いですが、日本ではダウン症患者を支援する仕組みが手厚く用意されています。
モザイク型ダウン症について正しく理解して少しでも不安を減らすことにこの記事がお役に立っていれば幸いです。