近年プラセンタ療法が注目を集める中、プラセンタ注射を検討する方が増えています。そのプラセンタ注射で使われる薬剤であるメルスモンとは、一体どのような薬剤なのでしょうか
メルスモンはプラセンタを原料とする薬剤の一種で、厚生労働省の認可を受けた安全性の高い優れた薬剤です。更年期障害などの症状改善に加え美容効果も期待できるとして、アンチエイジングなどの美容目的で摂取する女性も増えています。
この記事ではメルスモンとはどのような薬剤なのか、その効果や副作用について解説していきます。メルスモンに関する知識を深めたいという方は、ぜひ参考になさってください。
目次
メルスモンとは?
プラセンタ療法で使用される「メルスモン」とは、一体どのようなものなのでしょうか。まずは、メルスモンについての知識を深めていきましょう。
プラセンタ注射の一種
メルスモンは、日本人のさい帯と胎盤(羊膜は除く)から抽出された「ヒトプラセンタ」を主原料とする医薬品です。プラセンタは英語の「胎盤」を意味する言葉で、細胞分裂を促す働きを持つ成長因子を豊富に含んでいます。この成長因子は新陳代謝の活性化を促す作用を持ち、体や美容にさまざまな効果をもたらす動物性たんぱく質です。
プラセンタを用いたプラセンタ療法は近年一層注目を集めていて、病院では注射を使用した治療法が主流となっています。プラセンタ製剤は厚生労働省の認可を受けた特定生物由来製品※に分類されていて、病院でプラセンタ注射を受ける際には医師からその効果や副作用などについての説明を受ける必要があります。
※特定生物由来製品とは・・主に人の血液や組織から抽出した原料や材料を使って作られた製品で、使用にあたり医療機関に患者への製品に関する説明と使用記録の作成保管、感染症などの情報報告が義務付けられているもの
メルスモンはプラセンタ注射で使用される薬剤の一種で、1956年に更年期障害、乳汁分泌不全の治療薬として開発されたものです。更年期障害や乳汁分泌不全のほか、肌のはりや潤いを改善する美容効果も期待できるとして、近年はアンチチエイジングの特効薬としても注目を集めています。
効果
メルスモンには内分泌調整作用や自律神経調整作用などがあり、ほてりやのぼせ、発汗、イライラ、不眠、憂うつ感などの更年期症状の改善が期待できます。また授乳期の乳汁分泌を促す作用もあるため、ストレスをはじめとしたさまざまな要因で乳汁の分泌が滞っている方の治療法としても有効です。
これらの症状改善に加え、メルスモンには肌の張りや潤い、しわ・法令線・たるみの改善などの美容効果のほか、アトピーやニキビの改善、発毛や育毛の促進、疲労回復、肩こりの改善などのさまざまな効果があります。
多様な効果を持つメルスモンですが、そのうち厚生労働省で承認されている効果・効能は更年期障害と乳汁分泌不全の2つのみです。メルスモンは60年以上にわたり使用されている薬剤であり、その安全性の高さは長年の実績からも証明されています。美容面に対しても優れた効果を示しますが、中でも45歳~59歳くらいの更年期にあたる女性の諸症状改善に高い効果を発揮します。
本項のまとめとしてメルスモンの効果を一覧表化したものは、以下の通りです。
<メルスモンの効果一覧>
疾患 | 更年期障害 |
乳汁分泌不全 | |
美容効果 | 肌の張り・潤い、美白・美肌、しわ・ほうれい線・たるみ |
発毛・育毛 | |
そのほかの効果 | 疲労回復、肩こり |
アトピー・ニキビ |
メルスモン投与の際の注意点
メルスモンの主原料であるプラセンタは動物性たんぱく質を主成分としているため、体質によっては副作用が出たり投与自体が出来なかったりする場合があります。ここでは、メルスモン投与にあたっての注意点を見ていきましょう。
副作用
メルスモンの主な副作用は、以下の通りです。
<過敏症>
- 悪心
- 悪寒
- 発熱
- 発疹
- 皮膚の赤み
<注射部位>
- 痛み
- 皮膚の赤み
メルスモンの投与によって副作用が発生する確率は約7%となっており、その中で最も多い注射部位の赤みや痛みは副作用発生例全体の約37%を占めています。そのほかの症状の発生率はいずれも5%未満と低いですが、これらの症状が出た場合には投与を中止し医師に相談しましょう。
またメルスモンはプラセンタを主原料とするタンパク酸アミノ製剤であるため、稀に免疫が過剰に反応することによるアレルギー性のショック症状(アナフィラキシーショック)を起こすことがあります。詳しくは後述しますが、アレルギー体質の方がメルスモンの投与を行う場合は事前に医師に投与の是非を確認することが大切です。
服用すべきではない人
前述の通り、メルスモンはアレルギー反応を引き起こす可能性のあるタンパク質やアミノ酸を主成分としている薬剤です。そのため、以下の体質の方に対する投与は原則禁止となっています。
<投与禁止>
- 過敏症
- 薬物過敏症
また以下の体質の方に投与を行う場合は、投与しても問題ないのかどうかを慎重に見極める必要があります。
<慎重投与>
- アレルギー体質の方
過敏症や薬物過敏症は、本来であれば体の保護や治癒の役割を果たす免疫機能が薬物や化学物質などの摂取が引き金となって健康な組織を誤って攻撃することで起こる炎症や損傷などの症状です。過敏症は主に発疹などの皮膚の炎症を引き起こすことが多く症状の程度は軽度から重度までとさまざまではありますが、中にはアナフィラキシーショックなどの重いアレルギー反応を起こすこともあります。この点からアレルギー体質の方がメルスモンを投与する場合は、医師に確認を取った上で十分に注意して摂取することが大切です。
メルスモンのよくある質問
ここでは、メルスモンについてよく寄せられる質問にお答えしていきます。
メルスモンは保険適用になる?
更年期障害、乳汁分泌不全の治療のためにメルスモンの処方を受ける場合には、保険が適応されます。保険適応の対象となるのは厚生労働省がその効果や効能を認めた病気のみであり、メルスモンが認可を受けている病気は更年期障害と乳汁分泌不全の2つのみです。
それ以外の目的での処方に対しては、保険は適応されません。したがって、しわをなくしたい、肌のハリを取り戻したいなどの美容目的でメルスモンの投与を受ける場合は保険適応の対象外となり、費用は全額自費負担となります。ただし病院によっては保険対象となる可能性もあるため、メルスモンの投与を受ける場合には事前に病院に確認すると良いでしょう。
メルスモンを注射すると太る?
太ることを気にしてメルスモン注射を躊躇している方もいるかと思いますが、メルスモンには体重を増加させる作用はありません。ではなぜメルスモンを摂取して太ったと感じる方がいるのかというと、これはメルスモンの主原料であるプラセンタが体の新陳代謝を活性化させることによるものです。
プラセンタが体の細胞分裂を促し新陳代謝を活性化させることで病気に対する抵抗力が高まったり疲労が軽減したりして心身が元気になると、自然と食欲が増していつも以上に食べてしまい結果的に太ることにつながります。
またプラセンタに含まれる成長因子には筋肉量を増加させたり骨密度を高めたりする効果もあるため、加齢により落ちてきた筋肉量や筋力の低下を防ぐ効果が期待できます。以前と変わらない食事量なのにメルスモンを注射するようになったら太ったという方は、プラセンタの働きによって筋肉量が増えたことがその要因のひとつと考えられるでしょう。
頻度はどれくらい?
メルスモンは通常2mlを毎日1回、もしくは2日に1回程度の頻度で皮下注射します。ただし症状や体質、体調などによって量や回数の調整が行われることが多く、1本2mlを2~3本の投与を週に1~2回の頻度で行うのが一般的です。メルスモンは一度に多く投与しても問題はありませんが、一気に大量に摂取するよりもこまめに分けて摂取した方が効果は長続きします。
メルスモンを注射しても効果が得られないという場合は、注射の頻度や量を上げるか投与期間を長く取ることで解決することがほとんどです。病院の中にはメルスモンの効果をしっかりと実感できるよう、注射を開始した最初の4週間は投与量と回数を多めに取ることを推奨しているところもあります。
更年期障害の症状とは?
更年期障害とは閉経を迎える45~55歳ぐらいの女性に見られるもので、更年期※に起こる心身の不快症状(更年期症状)の中でも日常生活に支障をきたすほど症状が重い状態を指します。更年期障害の主な症状は以下の通りです。
※更年期とは・・閉経前の5年間と閉経後の5年間をあわせた10年間
<血管拡張と放熱による症状>
- ほてり
- のぼせ
- 発汗
- ホットフラッシュ
<そのほかの身体症状>
- めまい
- 動悸
- 胸の締め付け感
- 頭痛
- 肩こり
- 腰痛
- 背中の痛み
- 関節痛
- 冷え性
- しびれ
- 疲れやすさ
<精神症状>
- 憂うつ感
- イライラ
- 情緒不安定
- 不眠
更年期障害の主な原因は、閉経に向かうにあたり女性ホルモンが減少することで起こるホルモンバランスの崩れです。しかし更年期障害を引き起こす要因は女性ホルモンだけではありません。更年期障害は閉経に伴うホルモン量の低下に加え、体質や精神状態、家庭や仕事環境などの要素が複雑に絡み合って引き起こされるものです。そのため症状は人によってさまざまで、女性の中には「症状を自覚しているもののそれが更年期障害によるものだと気づかなかった」という方も多くいます。
更年期障害にお悩みなら病院へ相談しましょう
更年期障害は多くの女性に見られ、更年期にある女性のうち約半数もの方がなんらかの不快症状に悩んでいるとされています。また症状に悩む女性の半数は治療などの対処を何もせずに放置しているとの調査報告もあり、このことからも更年期障害に対する治療法が浸透していないことが分かります。
更年期障害は病院で適切な治療を受ければ改善が見込めるため、症状に悩んでいる方は病院を受診して医師に相談しましょう。